工賃と利益③ 作業の場合の適正価格

工賃と利益③ 作業の場合の適正価格

K-NET!では、就労支援継続事業における工賃向上を目標とした活動を行っています。では、工賃を向上させるにはどの様にしたら良いでしょうか?
先回は製品販売の場合の適正価格について考えて見ましたが、今回は請負作業や受注作業の場合を考えてみます。

1.作業の適正価格 成果が同一ならば価値は一緒
皆さんが受注される請負作業(例えば公園清掃)や受注作業(組み立て作業棟)の価格はどの様に決めていますか? 発注する側が「障がい者だから安くて良い」と思って安い値段で発注したり、「今までこの価格だから値上げと言うと注文が来なくなる」と思って我慢していませんか?

この様な場合の「適正価格」とは何でしょうか? いろいろな考え方があると思いますが、私は「成果が同一ならば価値は一緒」と考えています。つまり、健常者が行ったのと同じ成果が得られる作業結果に対しては、健常者が行ったのと同額が支払われるべき。という考え方です。

この場合の作業結果は、ある広さの公園の清掃だったり、組立作業の完成数で、健常者に支払われる価格としては最低賃金以上を想定しています。では、少し詳しく見てみましょう。

2.公園清掃の場合
ある公園を健常者(職員でも良いでしょう)が清掃する場合、2名で4時間かかるとします。その場合の受注価格は最低賃金8時間分以上になるはずです(ここでは9,000円とします)。では、B型事業所が受注する場合、利用者4名6時間で作業が出来るならば幾らで請求すれば良いのでしょう? 「公園がきれいになった」という同じ成果ですから同一価格9,000円を請求するべきです。この場合の利用者の労働時間合計は4名 6時間で24時間、時間単価は375円となります(もちろん同行している職員が作業を手伝ってはいると思うのですが、そこは目をつぶって下さい)。ちょうど1/3ですね。

*これはB型の場合です。A型ならば最低賃金以上を支払う必要が有りますからもし同一の作業を同じ人数で行ったら請求金額は24,000円(時給1,000円として)になってしまいます。これでは競争力が有りませんのでA型の事業としては成り立たないことになります。

3. 受注作業の場合
組立作業の場合、健常者が1時間に出来る成果(たとえば25個組立できる)に対し最低賃金以上の価格で発注される事が必要となります。もし1個あたり30円で受注していたとすると、健常者(職員のあなた)は時給750円で働いていることになりますが、これで満足できますか? では適正な価格は? 最低賃金/時間個数ですから40円以上です。
もし利用者が時間当り10個組立できるならば時間単価は400円、15個ならば600円が支払われることになります。
そう考えれば利用者がより多くの組立作業を行えるように工夫すること、利用時間内に十分な作業量を確保する事が工賃向上のポイントとなり、職員の皆さんの責務となります。

*A型の場合は2,と同様で、健常者並の作業効率が無いと事業として成立しません。一方で成果に関わらず働いた時間に対し賃金が支払われる場合は時給で最低賃金以上が支払われますので、A型の場合はこちらの条件での契約を行う事が必要になります。

4. 商品価値
先回お話ししたように、価格以外の要素を付加することで「商品価値」を上げることが出来ます。例えば掃除の場合の丁寧さは価格には反映しないかも知れませんが、反復注文には効果的です。また受注作業の場合、短時間に大量の注文がこなせることとか、発注量の月次変化に対応しやすいことなどが受注継続や単価アップに影響します(もちろん、これに対応出来る作業体制を作る事は職員にとっては難しい事ですが)。
もちろん、障がい者の就労に貢献しているという発注会社側の満足度や顧客訴求力も商品価値になります。フェアトレードを売り物にしている商品と同様、障がい者就労に貢献しているというのが売り物になると良いですね。

4. 適正価格での受発注
「話は解ったけど、その価格では受注できないよ」と思われた方、それは一面では正解です。しかし、基本的な考え方を理解した上で適正価格の意味合いと企業の社会的責任、社会的価値を発注者と話し合って少しずつでも適正価格に近づけていくのが事業所の役割だと思います。また、複数の作業があるときどちらの作業を優先するかの判断基準としても「適正価格」の考え方を活用して下さい。
K-NET! 監事 MBA 米田和晋

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