障害者就労支援事業は儲かる?!-2

障害者就労支援事業は儲かる?!-2

【「障害者福祉事業」が倒産する?】

東京商工リサーチの調べによると、2019年の「障害者福祉事業(生活介護、グループホーム、就労系)」倒産は30件で、調査を開始した2000年以降、最多となったそうです。倒産原因は、販売不振が16件と全体の5割を占め、次いで、無計画による事業上の失敗(放漫経営)が6件で2割となっています。

同調査では、2013年4月「障害者総合支援法」が施行され、民間企業の参入への敷居が低くなり、給付金や補助金を頼りにした企業が大幅に増加し、そのように安易に参入した企業の放漫経営が急増しているとしています。

倒産した「障害者福祉」事業者の創業計画を検証してみると、創業前の計画と実績がかなりかけ離れてしまっているケースも少なくないそうで、安易な制度ビジネス先行型(結果、不正受給に手を染めたり、利用者や職員の解雇になってしまったり。中には悪質なものもあり)や理念先行型(資金が追い付かない)が混じり合っているという状態だそうです。

実際にやってみたら創業前の計画と違いが出てくるというのは、やってみなければ分からないところもあるので仕方ない部分もありますが、「かなり・大幅に乖離してしまう」というのは、そのような結果になる前になんとかできなかったかなと思います。

 

【「儲かる」で参入、不正受給に】

また共同通信の全国自治体調査は、2014年~2018年での不正受給額が約26億2千万円に上ると報告しています。処分件数は630件で、約7割は株式会社などの営利法人。サービス種別では、居宅介護(ホームヘルプ)や障害児向けデイサービス、就労支援系が目立ったということです。不正が相次ぐ理由については、「事業者のモラルの低下」約50%、「法人種別を問わず営利優先の事業者が増えたため」31%、「株式会社など営利法人の参入増」29%の回答でした。

このような理由が出てくる背景には、「注目のビジネス」などと魅力的な数字を示しながら障害福祉の事業に参入を促すコンサルタントがいて、その話を聞いて異業種参入してみたものの上手く行かず、利用者リクルートや利用率の低迷などで経営状態が悪化して、結果、職員の配置数をごまかしたりして不正請求に至る、などという流れのようです。

事業参入を促す数字は相当に魅力的だったのでしょう。

しかし、事業参入決定前に(特に異業種参入で福祉が初めてであれば)、経営実態の数字にあたったり、実際の事業者(複数)に聞くなりして、自分自身の目と耳で情報を集めるだけでも、安易な決定はしなかっただろうし、現実的な計画を立てただろうし、参入後に計画と乖離が出てきてもどこがで改善することができたのではないかと思います。

このプロセスがあれば結果は変わっていただろうなと思います。

その時間があれば、この事業が税金を使ったもので、かつ、儲からないからやめますという種類のものではないということが深く理解できると思います。

 

【ソーシャルビジネスとしての障害福祉事業】

就労継続支援A型事業所、B型事業所の経営者とお仕事をすることが多いのですが、成果を出していたり、挑戦を続けていたりする経営者から感じるは、障害のある人が働くという意味を明確に持っていらっしゃるということ。そこに自分たちの事業所がどのように関与するか、どのような役割を果たそうとしているのかが、「生きた言葉」として語られているということ。

つまりどのような問題にどう取り組むのか、そのために障害福祉の枠組みを使ってどう達成するのかを持っているということです。この点が際立っています。

障害福祉事業は、障害者の生活や仕事といった中にある社会問題解決を起点にビジネスを組み立てているソーシャルビジネスです。ビジネス(事業を継続させていくこと)を通して社会問題を解決するという思考と行動でないと、参入してみたものの計画通りにいかずに・・・という結果になりかねません。

とはいえ、何かのきっかけで業界参入の興味をもったのなら、障害福祉・障害者就労や雇用といった社会問題そのものに関心を寄せていただいて、問題の構造はどうなっているのか、どの部分でどのような役割で自分たちは関われるのかを考えてみてはいかがでしょうか。

また参入してみたもの計画通りに行かないという場合は、一度立ち止まってみて、目の前にいる利用者の声や一緒に働ている職員の声を聞いてみてはどうでしょうか。そして同様に、問題の構造や自分たちの役割を考えてみていかがでしょうか。

社会問題解決のために多様な事業者が参入し、それぞれの知恵と工夫で成果を出していく(=利用者のためになっていく)というのは、決して悪いことではありません。

そのためにはどんな社会問題を解決したいのか、どんな社会を望むのか、自分たちはすべきことは何かを、自分たち生きた言葉で語り、行動する事業者が生まれていってほしいと思っています。

私たちK-NET!はそういう事業者とともに、一緒に汗を流していきたいと思ってます。

 

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